【コラム】会社側には厳しい展開?未払い残業代請求の構造

2018-01-06

1 未払残業代請求の構造

 労働者(被用者)が会社(使用者)に対して行う残業代の請求は、実務上、「割増賃金請求」や「時間外手当請求」などと呼ばれます。

 そして、これらの事件においては、まず、労働者側が以下の各事実を証拠により立証する必要があります。

(1)労働契約の成立

(2)割増率に関する就業規則の規定等 (法定の最低割増率よりも有利である場合)

(3)請求に対応する時間外(休日・夜間)の労務の提供

 仮に労働者側がこれらの事実について立証できた場合には、会社側としては、後に述べる「抗弁(反論)」を証拠により立証しなければ、労働者による未払残業代請求が認められてしまう、という構造になります。

 労働者側の立証については、「いつ何時間残業したのか」という上記(3)の点について問題になることが多いですが、それは例えばタイムカードや業務日報などによって立証されていくことになります。

 これに対して、会社側は、例えば、労働者側が提出した業務日報について、その内容と矛盾する事実(「その日は直帰しており、残業などしていないこと」など)を指摘し、当該業務日報の記載内容について信用性が低いこと(労働の事実が立証されていないこと)などを主張することが考えられます。  

 

2 経営者側の抗弁

 労働者側が上記の各事実を立証できたとして、これに対して経営者側が抗弁(反論)として主張できる事実としては、例えば次の事実があります。  

 

(1) 請求者が管理職であること

 請求者が「監督又は管理の地位にある者」に該当すると、時間外手当及び休日手当は支給されません。

 ただし、管理職であっても、深夜割増賃金は支払われますので、夜間手当の請求に対しては抗弁とはなりません。

 なお、ここでいう管理職に該当するか否かは、役職名などで形式的に判断されるものではなく、職務の内容や権限、責任の程度、労働時間に対する裁量の程度、賃金の多寡などを考慮して実質的に判断されます。  

 

(2) 別の形で時間外手当を支給したこと

 経営者側から多く主張されるのが、この抗弁です。

 ここでいう「別の形」とは、例えば、 ①時間外労働に対して定額手当を支給している場合や、 ②時間外手当を基本給に組み込んで支給している場合などが考えられますが、いずれの場合においても、その手当額が労働基準法所定の割増賃金額を上回っていることが必要であり、また、②の場合では、基本給と時間外手当とが明確に区別されていることが必要です。

 したがって、例えば、単に「ウチの会社は年俸制であり、その中に割増賃金も全て含まれているのだ。」と主張するだけでは、抗弁として有効に機能しませんので、注意が必要です。  

 

(3) 消滅時効

 賃金債権の消滅時効期間は2年間ですので、これを経過している場合には、消滅時効を援用することができます。

 時効期間の起算点(スタート)は、通常「給与支払日」が起算点となることが多いです。

 なお、民法改正の影響により、2年間という消滅時効期間が今後伸長される可能性もありそうです。  

 

3 経営者側には厳しい展開

 このような未払残業代請求の主張立証構造において、いったん労働者から未払残業代を請求された場合、経営者側は、事前に十分な準備・対策をしておかない限り、未払残業代請求を排斥することは困難であるといえます。

 だからこそ、経営者側としては、普段から労働者の労働時間を正確に管理し、労働者との間において未払残業代を生じさせないよう労務管理することが重要であるといえますし、またそれは労働者にとっての利益にもなります。

 当事務所においては、紛争に至る前の労務管理から、事後的な訴訟対応まで、労働問題全般についてご相談いただけますので、まずはお気軽にご相談をいただければと思います。

 

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